食べる楽しみを取り戻す!ムース食の心理的効果とは?(その2)
食べる楽しみを取り戻す!ムース食の心理的効果とは?(その2)
監修:管理栄養士 麻植
有希子 先生
制作・編集:メディバンクス株式会社
3.ムース食が生んだ笑顔と前向きな変化
ムース食で得られた反応
ムース食を取り入れてどんな変化があったか、介護施設や在宅介護での事例をいくつかご紹介します。
●自分で食べきれた満足感(施設の例)
嚥下機能低下により軟菜食※でも食事時間が長くなり、疲労感が増して全て食べきることが難しくなってしまったAさん。食事はご自身で食べたいという強い意思があり、ムース食を取り入れてみました。すると咀嚼も嚥下もスムーズになり、自力で食べきることができたため、自己実現につながる満足感が得られました。
※軟菜食……舌でつぶせる固さや歯ぐきで噛める固さに大きさ・柔らかさを調整した食事。
●食べこぼしが減った(施設の例)
パーキンソン症候群により、食事を上手にすくったり口まで運んだりすることが難しくなって食べこぼしが増えてしまったBさん。1日に必要な食事量がとれなくなってしまったので、ムース食と食べやすい介助食器※を組み合わせることに。すると食べこぼしが減り、本人は満足感が得られ、介護職員はケアにかかる時間の削減につながりました。
※フチ(縁)に返しがあるお皿や握りやすいスプーンなど工夫された食器やカトラリー(スプーン・フォークなど)のこと。
●口から食べられる満足感を得た(在宅の例)
摂食嚥下障害により入院中は胃ろう※を選択したものの、退院後は口から食べたいというCさん。ご主人の希望を叶えたいというご家族の想いにより、奥様が以前本人が食べていたおかずをムース食にしてみたところ、スムーズに食べることができました。奥様は不安が解消され、本人の満足感につながりました。
※口から食事や水分を摂ることが難しくなった方のために、胃へ直接小さなチューブを通して、栄養剤や水分を補給する方法。
●独り暮らしでも健康を維持(在宅の例)
独り暮らしで食事は宅配弁当を取っていたDさん。嚥下機能の低下により完食できなくなったうえに、残渣(食べ物のかす)が口の中に残ることが増えて口腔内の状態も悪化してしまいました。そこで宅配弁当を通常食からムース食に変更したところ、再び完食できるようになりました。また、食後に口の中に食べ物が残ることもなくなり、口腔内の状態も良くなりました。
ムース食は介護する人にも有効
ムース食に変えたことで食べやすくなると介護する方にもゆとりが生まれます。
また、ムース食には市販品もあるので、それを使うと調理の手間も減り、さらにゆとりが生まれることでしょう。市販のムース食は種類も多彩ですし、長期間ストックすることも可能なものもあります。食事の負担が減ることで生まれる介護する方のゆとりは本人にも伝わり、よい結果が生まれます。
4.生活の質を高めるムース食の工夫
本人の嗜好を尊重したメニュー作り
「以前食べていた◎◎が食べたい」という声が本人からよく聞かれます。同じものは提供できなくても、本人が元気だった頃に食べていた「その家ならではの味付けをそのまま食事に活かす」ことは食欲を増すよい方法です。
お手製のムースで「好きだった味」や「思い出の料理」など記憶にある味付けを再現してみましょう。例えば、以前と同じ調味料を使ったり、うなぎのムースに以前通っていた近所のお店のタレをかけたりすることで、本人は好物を食べた気分になるものです。昔の記憶にある味が食べられることは幸せにつながります。
季節感や行事を取り入れ、“生活のリズム”を作る
食事の楽しみの一つに季節感があります。施設の食事では季節の行事に合わせた食事や、旬の食材を使った献立をムース食で提供できますが、家庭ではなかなか難しいでしょう。それでも、旬の野菜や食材を取り入れたり、秋には紅葉の葉を飾ったり季節感を取り入れることはできると思います。
また、お誕生日やお孫さんのお祝い事などイベントも、生活の中に「変化」と「楽しみ」をもたらします。最近はムースのおせち料理も販売されていますので、お正月を楽しむために利用するのもよいでしょう。
心のゆとりをもたらす環境づくり
一人で食事をするのと、大勢で話をしながら食べるのとでは、食事量に差が出ることがあります。一緒に座って食べる「共食」はとても大事です。ときには食卓を囲み、昔話をしてみましょう。知らないうちに食が進むだけでなく、人との交流によって笑顔や会話が増え、孤立感が軽減されます。
食事形態の変化によって失われやすい「食べる楽しみ」は、心の健康や生活の質に大きな影響を与えます。ムース食を取り入れ、食事環境を整えることで、食事が義務や治療ではなく「楽しむもの」へと変化すると、生きがいややる気につながり、生活全体の質を上げることができるでしょう。

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