水を飲むとむせる人は、とろみをうまく使おう(1)
水を飲むとむせる人は、とろみをうまく使おう(1)
~飲みたい・食べたいを叶える「とろみづけ」~
監修:管理栄養士 髙﨑 美幸 先生
制作・編集:メディバンクス株式会社
1.水を飲むとむせる人は、とろみをうまく使おう
水やお茶などを飲み込んだ時にむせてしまうことはありませんか?それは、水分が本来送られる食道ではなく、誤って気管に入ってしまったために起こります。
通常、食べ物や飲み物がのどの奥に達すると、気管は一瞬「喉頭蓋」というフタで閉じられます。加齢などにより、この反射が遅れるとフタが間に合わずに、飲み込んだものが気管に流れ込むことがあります。これが「誤嚥」と呼ばれる状態で、誤って気管に入った液体や異物を排出しようとして、むせ込みが起こります。
特に水やお茶などサラサラの液体はのどを通過するスピードが速く、フタが間に合わなくてむせ込みやすくなります。むせた時に異物をうまく排出できればよいのですが、排出できない場合は、肺炎の原因となり生命にかかわることもあります。
水分を補給しないと、危険がいっぱい
むせるからといって水分を摂るのを控えると、次のような危険があります。
●脱水
私たちの体は50~60%※が水分からできており、その水分の多くは食べ物や飲み物から補給されています。水分が不足すると、日常生活に次のような悪影響が出ることがあります。 ※年齢によって異なる
・倦怠感、立ちくらみ、頭痛、ぼんやりすることが増え、転倒や寝たきりになるリスクが高まる
・代謝が低下し、薬の効果が薄れることもある
・体温調節ができず、発熱や脱水症状を引き起こすことがある
・血液がドロドロになり、脳梗塞や心筋梗塞の原因になるおそれがある
・口が乾き、食べにくさや話しにくさ、口臭の原因になる
・皮膚の弾力性が失われ、皮膚トラブルが起こりやすくなる
●誤嚥
通常、唾液が出て、それを飲み込むことがのどの筋肉のトレーニングになっています。しかし水分不足により唾液量が減ると、飲み込む回数が減り、のどを使わないことで筋力が低下してしまいます。その結果、さらに誤嚥しやすくなります。
●肺炎
むせ込む力が弱いと誤って飲み込んだ液体・異物を排出できず、誤嚥性肺炎を起こすおそれがあります。
1日に飲み物から摂る水分量の目安は、約1~1.5Lといわれています。水分は少量ずつこまめに摂るよう心がけましょう。
2.むせないための秘訣は「のどの体操」と「とろみ」
のども筋肉。トレーニングしよう
日頃からのどや首周りの筋肉を鍛えましょう。
水分にとろみを付けてみよう
水分にとろみを付けることで、口の中でまとまりやすくなり、のどをゆっくりと流れていくため、むせを防ぐことができます。むせやすくなってきたら、飲み物にとろみを付けることを考えてみましょう。
ただし、とろみの加減には注意が必要です。とろみは薄すぎると、のどを通過するスピードが変わらず、むせを防げません。濃すぎると飲み込みにくくなったり、のどに張り付いてしまい、逆に危険なこともあります。その人に合ったとろみ加減は、専門家が舌やのどの動きを見ると判断できますので、適切なとろみ加減を見つけるためには、医師や管理栄養士などの指示に従いましょう。
もし誤嚥してしまったら
呼吸機能が十分に働いていれば、力強い咳で誤嚥したものを吐き出せます。そうでない場合は、➀口の中に残っている食べ物をすぐに取り除く。②顔を下に向けたまま、ゆっくり口呼吸をすると吐き出しやすくなる。③背中(首筋から肩甲骨の間)を静かにさすってもらう。
これらの対処法を試しても改善が見られない場合は、すぐに医療機関に連絡して専門的な処置を受けることが重要です。