食べるたびにむせるときは(1)
食べるたびにむせるときは(1)
~見逃してはいけない食べる機能低下のサイン~
監修:管理栄養士 髙﨑 美幸 先生
制作・編集:メディバンクス株式会社
1.食べる機能が低下したら
食事中によくむせる、食べこぼしが増えた。
食事は単なる栄養補給ではなく、楽しみのひとつ。それは高齢になっても変わりません。しかし、加齢とともに食べる機能、すなわち「噛む力」「飲み込む力」が低下すると、食事中にむせたり、食べこぼしたりすることが増えてきます。それらは一時的なものに見えても、実は栄養失調や低栄養、水分不足、窒息、誤嚥などのリスクを高め、ときには生命にかかわるおそれがあります。
食べる機能が低下すると起きること
●栄養失調や低栄養
思うように食べられず、食欲が減退したり食事がおっくうになったりすると、十分な栄養が摂れなくなる場合があります。
●水分不足
水分は特にむせやすいため、飲むことを敬遠しがち。そのため脱水や熱中症の原因にもなりかねません。
●窒息
小さく噛めないので、かたまりのまま飲み込んでしまい、のどに詰まらせるおそれがあります。
●誤嚥
飲食物があやまって気管に入ることがあり、肺炎を引き起こす原因にもなります。
上記のいずれも最悪の場合は死亡するおそれがあります。これらの症状を引き起こすことのないよう、早めの気づきや対策が必要です。
見逃したくない機能低下のサイン
あてはまるものがないか、チェックしてみましょう。
□ 食事中にむせる、せき込む
□ 食べ物を口の中にため込んだまま、なかなか飲み込めない
□ 食べこぼしが増える
□ 食事中や食後に痰が絡む
□ 今まで食べていたものを「嫌い」と避けるようになる
□ 食欲が落ちる(食欲不振)
□ 体重が減る
一つでも該当したら、食べる機能が低下しているかもしれません。かかりつけ医師や看護師、管理栄養士などに相談しましょう。
2.むせと誤嚥の関係
むせはなぜ起きる?
むせが起きる原因には「脳卒中などの病気」「治療薬の影響」もありますが、誰にでも起こりえるのは「のどの反射機能の衰え」です。
鼻から入る空気も、口から入る飲食物ものどを通り、それぞれ気管と食道へ送られます。のどと気管の間にはフタのような器官(喉頭蓋)があり、食べ物が通るときには素早く反応してフタをし、気管に行かないようにはたらきますが、加齢とともにその反射機能が遅れると、フタが間に合わずに飲食物が気管に入り込んでしまいます。
このように飲食物が誤って気管に送り込まれることを「誤嚥」といい、吐き出そうとして「むせ」や「せき込み」が起こります。特に水分は食道に入るまでのスピードが速いため、フタが閉じるのが間に合わないケースが起きやすくなります。
むせをほおっておくと怖い
もともと口の中には目に見えない細菌がたくさんいて、食べ物はそれらと接してのどを通ります。そのため、誤嚥したままでいると、肺の中で細菌が炎症を起こして「誤嚥性肺炎」などの生命にかかわる病気を引き起こすおそれがあります。
むせが起こったときは、誤嚥していないか注意が必要です。もし、「湿ったガラガラ声が出る」「呼吸が苦しい」「37.5℃以上の微熱が続く」などの変化に気づいたら、すぐかかりつけ医師などに相談してください。