もっと知りたいムース食(その2)

もっと知りたいムース食(その2)

~「やわらか食」との違いや考え方、使い方のヒント~

監修:管理栄養士 伊藤 清世 先生
制作・編集:メディバンクス株式会社

3.無理なく上手に取り入れるには


ご本人の心身に寄り添って

ムース食を取り入れるにあたり、大切なのは、まず食べるご本人の口の機能がムース食に適しているかどうかです。舌で食べ物をつぶすことができ、舌と上顎の動きで食塊(しょっかい:飲み込むためのかたまり)が形成でき、のどへと送り込む力があるかどうか。異物に対する反応があるか、そしてある程度の栄養状態が保たれているか、十分に観察をしたうえで判断するようにしてください。そして、身体の機能面だけでなく、気持ちにも配慮することが大事です。ご本人が望んでいる、または抵抗なく受け入れられそうであれば、まずは少量からムース食にトライしてみてください。

ご家族の気持ちも大切に

人間だれしも、無理なことはしんどいものです。日々の介護そのものが家族にとっては重労働であることが多いため、もしムース食が介護生活の負担になるようであれば、無理をする必要はありません。「食べたい」と言われても、ご自分の状態や費用面などで導入が難しいときは、ほかの食事でまかないましょう。口の機能から考えると、ムース食が食べられるということはペースト食も食べられる可能性が高いともいえるでしょう。ペースト食であれば、普通食をミキサーやブレンダーでなめらかに撹拌すれば比較的簡単にできるので、余裕のないときはそのような食事に置き換えてみましょう。また、せっかく手間をかけたのに食べてもらえないこともあります。食べにくそうだったり、気に入ってもらえないときは潔くほかの食事に切り替えて、まずは栄養を摂ることを優先してください。

画像の説明文

「無理をしない」が上手な食事のコツ

4.「食べたい」はどこから来る?


食事をとりまく環境は食欲とも関係大

食べ物は、味やにおいだけで味わうものではありません。目から入ってくる視覚情報、耳から入ってくる生活音や人の声、そのときの気持ちなどで、おいしさが増したり半減したりするのはよくあることです。ムース食を食事として楽しんでもらうには、ご家族や周囲の人もムース食を「おいしそう」と思ったり「これ、おいしそうだね」と声かけをしながら食べさせてあげると、ご本人も楽しみながら食事をすることができるでしょう。どうしても色や形がシンプルになりがちなムース食は、食器やトレーなどを見た目のよいものにするだけでも印象が変わります。

食べるためには体力も必要

食べ物を口からのどへと送り込み、飲み込むのは筋肉の力です。また、飲み込んだあとに消化して、栄養を吸収するためにも体力が必要です。体の状態が思わしくなく、だるかったり熱があったりして辛いときはどんな食形態であれ食欲が落ちるものです。そのようなときはムース食にこだわらず、どうしたら栄養が摂取できるかをご本人と一緒に考え、ときにはペースト食に戻したり、とろみをつけた飲料など、食べられるものを食べるようにしてください。体力が戻ってくると、また食べたいという気持ちも湧いてきます。状態に合った食事を通じてまずは体力をつけ、少しずつ体のパフォーマンスを上げることを目指しましょう。

learn