ムース食は障害のあるお子さんも食べられる?(その1)

ムース食は障害のあるお子さんも食べられる?(その1)

~「発達期摂食嚥下障害」と向き合うご家族へ~

監修:管理栄養士 稲山 未来 先生
制作・編集:メディバンクス株式会社

舌でつぶせるやわらかさ、飲み込みやすさがメリットのムース食。昨今では、口に取り込む、噛む、飲み込むことが難しいお子さん(摂食嚥下障害児)に適した食形態のひとつとしても注目されています。しかし「市販のムース食は高齢者向けなのでは?」「子どもに食べさせても大丈夫?」と思う方もいらっしゃいます。
結論は、市販のムース食はお子さんが召し上がっても大丈夫。ですが、使用の際には気をつけたいポイントがあります。本記事では、食べることに障害のあるお子さんへのムース食提供についてご案内します。

1.「発達期摂食嚥下障害」と食について


「発達期摂食嚥下障害児」とは

障害のあるお子さんのなかには、食べることや噛むこと、飲み込むことに問題を抱えているお子さんがいます。専門的には「発達期摂食嚥下障害児」と呼び、「発達期」とは乳幼児から思春期ぐらいまでの成長段階を意味します。原因は先天的なものから生後の病気や怪我などさまざまで、障害の程度も「少し食べるのが下手」という軽度から「飲み込みの反射が起こらない」などの重度まで幅が広く、どのように栄養を摂取するかについては、医療従事者や専門家の指導が必要です。

子どものための「嚥下調整食分類」が完成

食べることに障害のあるお子さんの食事形態指針として、病院や施設では長い間、「嚥下調整食学会分類2013」という基準が用いられてきました。これは主に、飲み込むことが徐々に困難となった大人のための基準であるため、乳幼児や発達期にある子どもを対象にした「発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018」という基準が新たに設けられました。
これにより、現場では障害のあるお子さんに寄り添った食事提供ができるようになり、同時に「ムース食」が注目されるきっかけとなったのです。

■発達期嚥下調整食分類副食表

分類名まとまりペーストムースまとまりマッシュ軟菜
状態・立体的に成形したペーストで、粒がなく均質
・スプーンにすくって傾けても簡単に落ちない
・スプーンで押した形に変形し、混ぜるとなめらかなペーストにな
・立体的に成形したペーストで、粒がなく均質
・まとまりペーストよりも簡単に切り分けられる
・スプーンにすくって傾けるとゆっくり落ちる
・切断面はなめらかで角ができる
 
・粒のある不均質な形態を立体的に成形したもの
・スプーンでつぶすことのできるかたさ
・すくって傾けても容易に落ちない  
・食材の形を保った状態
・スプーンで簡単に切れる程度までやわらかくしたもの
対象唾液分泌が良好で、若干の送り込み能力があり、食塊保持や舌の押しつぶしを促す場合に用いる若干の食塊保持能力があり、舌の押しつぶしを促す場合に用いる  ある程度の食塊形成力と送り込み力があり、歯や歯ぐきの押しつぶし・すりつぶしを促す場合に用いるある程度の押しつぶし能力や送り込み力があり、歯・歯ぐきでのすりつぶしを促す場合に用いる

※日本摂食嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会
「発達期摂食嚥下障害児(者)のための嚥下調整食分類2018」を参考に作成

「離乳食」と「嚥下調整食」の違い

離乳食の目的は、母乳やミルクを飲んでいる乳児が、徐々に固形食へと移行できるよう、噛む力や飲み込み力を育てること。食べるための機能を発達させ、味覚を育てていく時期なので、味付けは薄味です。
一方で嚥下調整食は、噛む力や飲み込む力が低下した人が安全に食事を摂れるようにすることが目的。味を感じにくくなった高齢者でも食べやすいように、味付けもはっきりとしたものが中心です。
離乳食と嚥下調整食は、どちらも「食べやすい」という点では共通していますが、その目的や対象者が異なる点に配慮が必要です。そして、離乳食と嚥下調整食のどちらにも活かせるのが「ムース食」という食形態になります。

食べることに障害のあるお子さんにも優しいムース食

ムース食は、食べ物自体に形があるのでスプーンなどですくって口元に運びやすく、噛むことが難しくても舌でつぶすことができます。
また、ベタつきが少ないので口の中でまとまりやすく、のどへスムーズに送り込んで飲み込みやすい特性があります。味や香りもつけやすいので、食べる意欲の向上にもつながり、そのときのお子さんの状態に応じてスプーンでつぶして食事介助するなど、「手元調整」ができるのも便利な点です。
ムース食は、食べるお子さんにも、介助するご家族にも、どちらにも優しい食形態であるといえます。

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